【待機児童問題】~第1回~ 待機児童って?

株式会社 ニコ・ワークス

【待機児童問題】~第1回~ 待機児童って?

2015/08/07 【待機児童問題】~第1回~ 待機児童って?

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2015年4月から、「子ども・子育て支援新制度」が全国で始まりました。「待機児童の解消」が高らかにうたわれてますが、その解釈や運用の仕方はそれぞれの自治体に任されています。また、住んでいる地域によっても子育ての環境が異なることが問題になっています。

今回はシリーズで、その背景にある待機児童の問題について、その現状と実態を紹介していきたいと思います。

 

 

待機児童って?

新米ママ「保育園に子どもを預けて仕事をしたいと思うんだけれど、保育園にはいるのって大変なの?」

先輩ママ「保育園に入園の申請をしても審査があるのよ。今は保育園に申請しても入園できずに待機児童になることもあるのよ。」 

新米ママ「待機児童って何ですか?」

先輩ママ「保育園に入園の申請をしても入園できなくて、順番待ちをしている子どものことをいうのよ。」

新米ママ「順番待ち?」

先輩ママ「1990年代にバブル経済が崩壊してから、共働きするママが増えてね。子どもが生まれてからも仕事を続けるのが当たり前になったのよ。それで、保育園を必要とするママが増えて待機児童が社会問題になったのよ。」

新米ママ「どれくらいの子どもが待機しているの?」

先輩ママ「厚生労働省の統計では、2014年4月時点で待機児童の数は、全国で2万1371人。6年間連続で2万人を超える人数だそうよ。」

新米ママ「えー、そんなに多いの?どうしたらいいの?」

先輩ママ「自治体ごとに保育園や定員を増やしているそうよ。」

新米ママ「それでも待機児童は減らないの?」

先輩ママ「認可保育園の定員は現在233万6千人で、前年より4万7千人分増やしたそうよ。」

新米ママ「それなら、待機児童が減ってもいいのに。」

先輩ママ「それがね、さらに保育園を利用したい子ども増えているのよ。」

 

 

待機児童の実態は?

新米ママ「待機児童がたくさんいることはわかったけれど…何歳の子どもが待機することが多いの?」

先輩ママ「85%は0歳から2歳の子どもよ。育児休暇が1年であけて入園させたい1歳児の待機児童が一番多いのよ。1歳児で入園できるのは奇跡的!って聞いたわよ。」

新米ママ「ハードル高いんだね。住んでいる場所によっても違いがあるのかしら?」

先輩ママ「待機児童は、都市部に集中しているそうよ。東京23区の中でも差があるので、引越しをして保育園に入れるようにするママもいると聞いたわ。」

新米ママ「自治体は保育園を増やせばいいのに!」

先輩ママ「認可保育園をつくる為には、国の基準にあった施設の広さや園庭が必要になるので、基準にあう土地を確保するのが難しいそうよ。」

新米ママ「・・・」

先輩ママ「他にも財源の不足や保育士さんの不足も問題になっているし、「子どもの声がうるさい」と住民の反対で保育園が作れないんですって。」

新米ママ「何だか子育て不安になってきちゃった!」

 

 

待機児童がふえてしまう原因は?

新米ママ「少子化っていわれてのに、何で待機児童は増えているんだろう?」

先輩ママ「1~3のような理由から、保育園を限定しなくてはならないので、待機児童が増えてしまっているようよ。」

1.核家族化

 家族の形態として、祖父母と住む家庭が少なくなりました。

子どもと両親だけで生活をしているため、両親が仕事をしている間に面倒を見てくれる人がいません。自分たち以外に誰も子どもを保育園に迎えに行けないとなると、仕事場や家に近い保育所を選びます。結果として、企業、住まいが集中している場所にある保育園に入園の申請が集中し、待機児童が多くなります。

2.共働きの家庭の増加

 共働きの夫婦が増え、自宅と職場の距離を考えて駅に近い保育園を選ぶなど、希望する保育園が集中する傾向にあります。

 最近は、24時間保育園もあり、共働きの夫婦にとっては、利便性の良いものとなっています。24時間でなくても、夜遅くまで預かってくれるところがあれば、そこを利用希望するはずです。

 かつては、結婚して子どもが産まれたら女性は家庭に入るというのが一般的でした。

不景気や、女性の社会進出もあり共働きの夫婦が増え、利便性の良い保育所が注目され入園の申請が集中し、待機児童の数が増えてしまったのです。

3.ひとり親家庭の増加

 子どもの保護者や妊娠中の離婚が増え、ひとり親家庭が増えました。

離婚した場合、母親が子どもを引きとる可能性が高く、母親が引きとった場合、子どもの体調不良に母親だけが対応せざるおえないことなどもあり、仕事の条件が厳しくなります。ひとり親であるがために職場や働き方が限定されて、特定の保育所しか選べないということがあります。

 また、一人で子どもを育てていかなければならないので、養育の都合上、残業が必要になります。遅くまでやっている保育園でなければ、働く事ができなくなってしまうのです。

 祖父母が近くに住んでいるなら迎えを頼むこともできますが、実家に帰らないで子育てするひとり親家庭もあります。

 家庭の変化に対して、保育園は受け入れ条件を変えることはほとんどありません。申込申請が集中する保育園 そうでない保育園に分かれてしまうという現状があります。

 もし、保育園が受け入れ条件を臨機応変に変えることができるなら、待機児童の問題は解決の方向に向かうのかもしれません。

 しかし、自治体や保育園の意向や理念もあり、受け入れ態勢を変えるのは難しいのです。

その結果として待機児童は増えているのです。

 

 

待機児童を取り巻く問題

 最近では、埼玉県所沢市の育休退園の問題が話題になっています。

 埼玉県所沢市が、待機児童の解消に向けた対策などとして、2歳児までの子どもを保育園に通わせている親が、新たに育児休業を取得した場合、預けている上の子どもを退園させる制度を2015年4月から始めました。

 この制度について、2015年6月25日、所沢市の保育園に子どもを通わせている保護者11人が、保育を受ける権利を侵害するもので違法だとして、市に対して退園の差し止めを求める訴えをさいたま地方裁判所に起こしました。

 訴えの中で、保護者は、育児休業は単なる休暇ではなく仕事復帰のための準備期間であり、市の制度は保育を受ける権利を侵害するもので違法だ、としています。

「保育園が少ないから待機児童がいるので、保育園の増設を所沢市に強く訴えたい」

という保護者からの声もあります。

 所沢市は、この問題の救済措置として、母親が育児休暇があけて仕事に復帰する際に、兄弟そろって保育園に入所できるよう体制を整えているとしていています。

 この問題の背景の一つも、待機児童問題なのです。

 自治体の考えとしては、育児休業中は仕事もなく自宅で子どもを見られるのであれば、保育園の空いた枠を、待機している子どもに割り当てて欲しい、というものです。

 また、所沢市は、退園する子どもの年齢を「0歳から2歳児」と限定していることから、「子どもが小さい頃は、母親が家庭で育てるべきだ」という考えもあるようです。

 今回の制度変更には、働く母親たちが声を上げました。

この背景には、保育園探しの困難さにともなう母親たちの不安やプレッシャーがあります。 妊娠中から保育園を探したり、状況によっては引っ越しをしたり、保育園に入れるかどうかが大問題です。

新米ママ「どんどん不安になってくるわね。」

先輩ママ「そうねママの中には、「二人目を産むことをやめようか」と考える人もいるそうよ。」

 

 

多様な育児環境の整備を

「小さい子どもは、母親が見た方がいい。」

「仕事と子育てを両立させたい。子どもを安心して預けられるようにしてほしい。」など、子育てのスタイルは、どれが正しい、どれが間違い、ということはありません。

 ママが望む時に子どもを近くで育てられたり、保育園に預けたり、自由に選べる育児環境を整備することが、必要なのではないでしょうか?

(文/関本初子)

(続く) 【待機児童問題】~その2~ まさかの待機児童!?



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Makkin Corporation プランナー /関本 初子

 公立保育園勤務10年の後、学童や子ども塾、認可外保育所、事業所内保育所、院内保育所等、数々の施設長を通じ、2000人余りの子どもたちとその両親の成長をサポート。その他、専門学校非常勤講師、保育士資格取得講座講師として、保育士の育成にも関わる。アドラー心理学 親と子のカウンセリング スマイルリーダーとして、「勇気づけの子育て支援」をベースとした、企画・実践に定評がある。

 

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