読み聞かせの効用

株式会社 ニコ・ワークス

読み聞かせの効用

2017/02/21 読み聞かせの効用

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大人は『どうして同じものばかり読みたがるのかなあ』と首をかしげてしまいますが(笑)。

じつはこれって、意味があるようなんです。

そこで今回は、認知神経科学者の泰羅雅登(たいら まさと)先生に、読み聞かせと赤ちゃんの脳の働きについて教えていただきました。

 

みなさんは「前頭前野」ということばをごぞんじですか?

脳の一番前のところにあって、私たちが物事を考えるときや創造性を発揮する時、他人とコミュニケーションをする際に活発に働く領域です。

ですから、ことばの数を増やし、聞く力や想像する力を育む”読み聞かせ”も、この場所が活発に働いているだろうと思われたのです。

しかし、実験の結果、ほとんど活動していないことがわかりました。

その代わり、喜怒哀楽などの感情や情動をつかさどる「心の脳」とよばれる「大脳辺緑系」が活発に働いていたんです。

ネコを見ていると、好きなことはやれるけれど、嫌なことはやらない、とはっきりしていますね。

私たちも実は同じで、気持ちいいことは何回でもやりたいけれど、嫌なことはやりたくありません(もっとも実際には勝手なことばかりできませんが)。

 

「心の脳」はうれしい、楽しい、キライを感じるのですが、それと同時に行動を決めるという、大きな役割を果たしています。

読み聞かせは「心の脳」をしっかり働かせて、うまく働くようにするという役目をはたしているのです。

ことばもしゃべれない、意味もわからない小さな子が、楽しい場面では笑顔になったり、悲しい場面では泣きそうな顔になったりするのは、この「心の脳」の働きからきていることだったんです。

さて、小さい子どもが何度も同じ本を読んでとせがむのはどうしてでしょう。

それは、お母さん、お父さんと一緒にいて、本を読んでもらうことが、その子にとって、とてもとても楽しいからです。

楽しいことは何度でも経験したい、だから、何度も何度もせがむのです。

子どもから一緒にいたいとせがんでくるこのチャンス、ぜひ逃さないようにしましょう。

 

読み聞かせを通して「たのしい」「うれしい」気持ちを育てることは、自分からもっとやってみようという前向きな姿勢を育みます。

「いやだ」「怖い」気持ちを感じられるようになることは、相手を思いやる気持ちを育てます。

これは、生きていくうえでとても大切なことなんです。

また、新しい実験では、歌いかけも読み聞かせと同じように、「心の脳」に刺激を与えることがわかってきています

 


今回お話をお聞きしたのは

泰羅雅登先生

1954年生まれ。認知神経学者、歯学博士。日本大学大学院総合科学研究科教授などを経て現職。

2006年3月より、白百合女子大学や公文教育研究会のスタッフとの共同研究班において、脳科学の視点から読み聞かせの効用などについて研究を行っている。

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